花や虫と暮らす「詩仙堂」

戦国武将石川嘉右衛門「ある日突然、戦うのがイヤになりました。花や虫たちと、暮らすことにしました。」

曼殊院道の急な坂を登っていると、ふと現れるのが左京区の「詩仙堂(しせんどう)」です。一般的には「詩仙堂」で知られていますが、正式名称は「凹凸窠(おうとつか)」で、「詩仙堂」はその内の一室を差します。「凹凸窠」とは「でこぼこした土地に建てた住居」という意味。建物や庭園は山の斜面に沿って作られています。入口の「小有洞(しょうゆうどう)」と呼ばれる山門をくぐると美しい石段が見え、その先の凹凸窠門を抜けて玄関へ。

ここ詩仙堂を造営したのは戦国武将「石川嘉右衛門」です。代々徳川家の臣であった石川家に生まれ、徳川家康に仕え近侍となりましたが、大坂夏の陣で一番乗りで敵将を討ち取って功を挙げたのに、当時の軍律で先陣争いを禁止していたため、論功行賞どころか蟄居の身となってしまい、そこで武士をやめて妙心寺に入り「石川丈山」と号しました。

33歳にて京都にて文化人として藤原惺窩(ふじわらせいか)に朱子学を学び、隷書・漢詩の大家であり、日本における煎茶(文人茶)の開祖としても知られています。丈山が三十六歌仙にならい堂に掲げるべき三十六詩人を選んだ際、左右十八人・それぞれの組み合わせに意味をもたせたといいます。肖像画は狩野探幽が描き、図上にそれら各詩人の詩を丈山自ら書いて四方の壁に掲げた「詩仙の間」がこの詩仙堂の名の由来になっています。

玄関から廊下を少し歩くと目の前に見事な唐様庭園が広がります。こちらの庭園は畳の間に座って見ることができ、自分の世界に浸かることができます。夏の午前中は混雑もなく、ゆっくり見ることができるのでお勧めです。暑さの中に秋の気配を感じる風がとても心地よく吹いていました。支柱が額縁変わりとなり、美術的な美しさも感じられます。お隣の詩仙の間から「三十六詩人」に囲まれながら見る景色にもまた違った良さがあります。

「至楽巣(しらくす)」と呼ばれる読書室の前から履物を履いて外の庭園へ。振り返ると丈山が月や庭を眺めたという堂上の「嘯月楼(しょうげつろう)」が見えます。階段を下りると庭園が広がっています。静かな森の中に響く流水と鹿威しの音を楽しむことができます。茶室「残月軒」が望める庭園は四季ごとにさまざまな趣があります。丈山は作庭にも優れた手腕を持ち、東本願寺只穀邸(渉成園)の作庭にも丈山が深く関わったとされています。

英国王室チャールズ皇太子と故元ダイアナ妃が見学された所としても知られ、外国の方にも人気がある詩仙堂。また、五月下旬の「さつき」と、十一月下旬の紅葉の素晴らしさも有名です。毎年混雑が予想されるのでご用心。次回は紅葉を愛でにまた足を運ぼうと思いながら家路につきました。

京都詩仙堂丈山寺
住所:606-8154 京都市左京区一乗寺門口町27番地
TEL:075-781-2954
ホームページ:http://www.kyoto-shisendo.com/
拝観料:500円 拝観時間:9:00~17:00(受付は16:45まで) 
定休:毎年5月23日