小笠原流弓術披露 三三九手挟式 2011

京都御苑に隣接した梨木神社は「萩の宮」とも言われ、京都を代表する萩の名所として知られています。毎年第3日曜か第4日曜の前後に「萩まつり」が行なわれます。今年は9月17日〜19日の日程で開催されました。最終日の9月19日には「小笠原流弓術披露 三三九手挟式」が奉納されました。

この射礼は邪心を祓う儀式です。的の大きさは九寸角、串にはさんで立てます。射手より的までの距離は九間。古式にのっとり、厳粛な儀式が奉納されます。日本書紀によれば、天照大神の御孫神、第三代の尊神が下界日本国に降臨の時、この国の魔鬼を退治するため、天稚彦(あめわかひこ)という神に天鹿児弓(あまのかこゆみ)・天羽々矢(あまのはばや)を賜って魔鬼を退けさせたといいます。時代が経って、弓術は「魔鬼を鎮め天下を泰平になす事、皆一張穹の勢たり」として武家社会に浸透しました。

小笠原流弓法の起こりは、約1100年前の鎌倉時代になります。当時はまだ小笠原姓は名乗っておらず、弓法を確立した事により源姓を賜り、将軍家(源氏)の弓術指南役となりました。承安4年(1174年)、天皇より小笠原号を賜って以来、将軍家(源氏・足利・徳川)の師範としてその弓術を正しく現世に伝えてきました。小笠原流は「陰陽道」からの影響を強く受けています。陰陽道は「森羅万象は陰と陽、+と-などの相反する気のバランスと循環によって成り立っている」という思想に基づく学問占術体系です。小笠原流は礼法・歩射・騎射だけでなく、弓の模様や行事の際の設営法にまで全てが陰陽道の思想(方位・数学)に基づいています。

流鏑馬や住吉踊など日本各地の伝統芸能や行事を見物していると「いよぉ~っ」という掛声をよく耳にします。これの語源は「陰陽(いんよう)」にあり、つまりは「宇宙」や「神」との呼応を示しているそうです。そう言えば一本締め(手締め)も「いよぉ~っ、パンっ」ですね。現代の意外なところにも陰陽道の影響が残っています。ぜひ祝いの酒席で豆知識として部下に披露して煙たがられてみてください。(笑)

弓馬術礼法小笠原教場では、小笠原流弓馬術礼法を教えることで生計を立てることは「掟」で固く禁じられています。これは商売として弟子に流儀を教えようとすれば、みだりに弟子を増やそうとし、かつ弟子とのあいだに妥協が生じ、流儀の品位を卑しめ歪めてしまうことを防ぐための「掟」です。本当に素晴らしい「掟」です。いまの世の中には武道や宗教など弟子(あるいは信者)を増やして金銭を稼ぐことだけが目的と化し、本来の崇高な信念や培われた伝統を損なって地に落ちた団体がたくさんあります。商業至上主義に陥りがちな現代における社会活動において、今一度みずからの行いを厳しく問い質し、本来あるべき清貧の姿を取り戻す必要があるのではないでしょうか。

弓馬術礼法小笠原教場
ホームページ:http://www.ogasawara-ryu.gr.jp/

梨木神社
住所:〒602-0844 京都府京都市上京区寺町通広小路上る染殿町680
ホームページ:http://nashinoki.jp/
拝観:無料