大田ノ沢の杜若群落が見頃 2012年5月

上賀茂神社の摂社にあたる大田神社。その鳥居横にある大田ノ沢の杜若群落が見頃を迎えました。

毎年5月上旬になるとカキツバタの葉っぱの新緑色に染まった大田ノ沢の上に、群青色の綺麗な花が咲いて見事な景色となります。古代の京都が湖の底であったことを今に遺す泥炭地として、国の天然記念物に指定されています。この一帯を開墾して栄えたのが賀茂氏であり、その崇敬を集めた上賀茂神社と大田神社では、現在でも毎年2月に「幸在祭(さんやれさい)」という成人の儀式が行われています。

平安時代には『千載和歌集』の編者である藤原俊成が、群青色に染まる可憐な様子を一途な恋心に例えて「神山や 大田の沢のかきつばた ふかきたのみは 色にみゆらむ」(意味:賀茂別雷命が降臨した山の近くにある大田神社へ深く願う色恋事は、この杜若の花の群青色のように一途で可憐であろう)と和歌に詠んでいるので、それ以前から大田ノ沢のカキツバタは名勝として有名だったのでしょう。


(根津美術館コレクション)

江戸時代には、琳派最大の巨匠である尾形光琳が国宝『燕子花図屏風』を描く際に大田ノ沢のカキツバタをモデルにしたとされています。無限の空間を感じさせる金地の中に栄えるカキツバタの花の群青色と葉の新緑色による見事な色彩。型紙を使ったという説もある同形状の一束一束によって生み出されるリズミカルな群生は尾形光琳だからこそ創造できた美の境地です。

大田神社
住所:京都市北区上賀茂本山340
カキツバタ拝観料:300円
駐車場:なし

上賀茂神社「幸在祭」

古くから上賀茂で行われている「幸在祭(さんやれさい)」を見に出かけてきました。「あがり」とよばれる15歳の男子の元服(成人)を祝して行われる伝統的な行事です。前夜に「宿」に集って夜を明かした各町の男子が、大島紬の羽織、黒足袋に下駄履き、首に白襟巻きの姿で太鼓を打ち鳴らし、「山の神」「上賀茂神社」摂社の「大田神社」を練り歩き成人したことを奉告します。

午前11時すぎに大田神社に着いた時には、すでに拝殿にて儀式が執り行われていました。大田神社の拝殿は中央が土間になっていて通り抜けることができる「割拝殿」といわれる古い形をしています。この土間に立ちお参りを済ませると、太鼓を打ち鳴らして「おーめでとうござる」と歌いながら拝殿を三周します。お祭りには大人、そして15歳以下の子供達も参加していて、鉦・笛を鳴らしながら「あがり」と一緒に町を歩きます。一行は太田神社を後にし、社家町を通り上賀茂神社へと向かいます。

道の途中には地元の人々が「あがり」を祝福しようと、行列を待ち構えていて和やかな雰囲気に包まれていました。町全体のお祭りといった感じです。上賀茂神社に着くと境内でお祓いが行われ、本殿へと向かいます。本殿でのお参り後、最後は山の神への奉告です。「立入禁止」と書かれた場所から山の中へと分け入り一行は消えていきました。地元のお祭りとして詳細が一切公開されていないため謎が多く、興味深い成人儀式です。京都のお祭りでありながら「なぜ九州で作られた着物・大島袖を着る習わしになったのか」も気になります。

大勢のカメラマンや観光客が見守る中、堂々としながらも時折見せる恥ずかしそうなあどけない表情がとても印象的でした。若さが溢れたその姿に、清々しい気持ちになった一日となりました。

上賀茂神社「幸在祭」
日時:2月24日
ホームページ:http://www.kamigamojinja.jp/index.html

大田神社「幸在祭」
日時:2月24日
時間:11時~
住所:京都市北区上賀茂本山340